活躍インタビュー

伊藤志乃さん

発酵ライフアドバイザー

伊藤志乃さん

プロフィール

三重県四日市市出身、株式会社トーエー代表取締役

2015年三重県御浜町にあるお酢のメーカーの立て直しに異業種から参入。知名度のない会社、まだ誰も知らないブランドを営業というよりも、とにかく製法や原料によってお酢の味が違うということを、自分が驚いたことを伝えたいと「味見」「対面販売」を優先に活動。マルシェや催事販売に重きを置いている。

2021年三重県多気町ヴィソンにお酢のショップを出すことが決まったときも、味見、試食のできる店を重要視し、MIKURA Vinegaryを運営している。
https://mikurasu.jp/company/

発酵蔵「MIKURA Vinegary」について教えてください。

三重県御浜町阿田和に醸造所をかまえ、5台の木桶が発酵室にならぶ小さな蔵です。
もともと、販売会社だったのですが、仕入れ元の製造所が水害に遭って醸造できない期間が続きました。その間に、販売会社が、製造を始めようと試みるも、資金難で計画は頓挫、その補填のために、引き受けたのが今の醸造場所です。急に木桶を調達することもできず、酒蔵の中古の桶を譲ってもらってリメイクしました。この中古の桶には、日本酒が染み付いていたため、スムーズに酢酸発酵がすすみました。


異業種から参入して、驚いたことや感動したことはなんですか?

忘れられない出来事が2つあります。
ひとつは、ある時木桶の中の酢酸発酵がうまく進まずに「温度がずっと上がらないんです」と蔵人から報告をうけました。それを聞いてわたしは内心「それはまずいぞ!どうにかしなければ!」と必死の思いで、木桶に向かって「がんばれがんばれ、いつもありがとう、大切なこどもたち」という気持ちで撫でました。もしかしたら「ありがとうね」「もうちょっとがんばろうね」と声に出していたかもしれないぐらい気持ちを注ぎました。
すると翌日、31度だった液温・酢の発酵熱が34度まで上がったのです。これには蔵人も驚いて「社長がさすったから酢が喜んだんでしょう」と真顔で言われました。

もうひとつは「明日は雨なので作業は明後日にします」と、これまた製造スタッフが言う。「明日じゃダメなの?」と聞いたら「だって、天気がいい方が気分がいいじゃないですか」と答えるのです。
以前の私なら「何を言っているの、雨だろうが雪だろうがやりなさいよ」と思っていました。けれど「そうだな、確かに作ってくれている人の気分がいいのが、機嫌よく働いてくれている方が絶対に美味しいお酢ができるよな」と思えるようになったのです。それから、私は、社員に対して怒らなくなりました。機嫌の悪い嫌味な言い方は極力避け、どうか皆さん楽しく明るく働いてください。と祈る気持ちになりました。
微生物は確かに生きていて、言葉を聞いている、心を感じているなどファンタジーなことは言いたくない方なのだけれど、温度だけは絶対に伝わっていると確信しています。これだけは間違いない。と思えるのです。優しさとぬくもりが伝わると味も変わると今は本気で思っています。


なぜ発酵ライフアドバイザーを取得されようと思いましたか?

知識のない異業種から参入した自分自身が、感覚だけでなくきちんと理論を知りたいと思ったためです。そして本を読むだけでなく、学科の詰め込みだけでなく、講師陣がとても晴れやかで、美味しいものを知っている集団だと思ったことも大きいです。受講する前に、先生方と実は飲み友達になれたことの方がずっと有意義でした。
そして、何よりスタッフみんなの気持ちが明るくてイキイキ、キラキラしているといつも感じていました。「きっと腸が元気なんだろうな」と兼ねてからその秘密を知りたいなと思っていたことが大きな理由です。


実際に取得し、学んでみて感じたことはなんですか?

やはり、人間の体は食べるものからできている、ということです。
発酵という言葉は、人間が「美味しい」「人間にとって有益な変化」という言葉であることを、最後は理屈よりも「食べてみましょう」と五感で味わって感じることが何より楽しかったです。
なんのために学ぶのかといえば、私にとっては「美味しい食事の喜びのために生きている」のだと知ることです。それと、食品ではない発酵と分解があることを洗面所のナイロンスポンジが崩れていく朝に「知るって楽しいな」「テストのための勉強じゃないな」と思えたことも一つです。
「体得する」「頭と腹で理解する」って最強だなと思えました。特にそれを仕事に生かす必要はなくても「学びは生きることだな」と思えたのは食べることに大きく関わる発酵という学問だったから。学ぶことがとても楽しいと思えました。

有資格者や協会が発酵文化に役に立つことはなんだと思いますか?

発酵食品・発酵という言葉が一過性のブームではなく「当然の知識になるといいな」と思います。
例えば「防腐剤、品質安定剤はなんのために存在しているのか」「腐るということと、腐らせないということがどういう反応なのか」を、現代社会の人々・消費者が “普通に” “常識として” 知っておいてほしいです。
それが善悪ではなく、人に必要か不必要かを判断する基準となってほしいと思います。味噌や醤油の味が変化するのはなぜか(そもそも状態が変わることを知っているか)、麹を使うとなぜ肉や魚が美味しくなるのか、柔らかくなるのか、変化とは何か、味が変わらないということはどういうことか。
資格をとらなくても、全ての人が「自分が口にするものがどのようにして出来上がっているのか」を理解できるようになるために、もっと発酵という理屈を身近に感じてほしいです。

有資格者にどのように活躍してほしいですか?

私たちお酢のメーカーのことを多くの人に伝えてほしいです。
とくにどう伝えてくれたら嬉しいかといえば、機械生産と機械を使わない生産方法の違いについてです。これは食品の原価、価格に反映することなので、安いものと高くても良いものの違いを伝えてほしいです。
そして「味」について好みを見つけられるように、「メーカー各社味が違うよね」ということを紹介してもらえるのがとてもありがたいです。何より消費者がさまざまなお酢を選択できるようになってほしいです。そのために、スーパーで販売されている製品以外にも全国各地に様々なお酢があること、蔵やイベントの紹介、販売されている人は全国各地のお酢を並べてほしいです。


これから資格をどのように役立てていきたいとお考えですか?

当社は今後の社員研修に発酵ライフ推進協会への講座を利用したいと考えています。
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株式会社トーエー
URL:https://mikurasu.jp/